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今後の掲載予定 【小説】薫と紗織の出会い 【設定】薫の戦闘スタイルや人間関係など補足 【設定】紗織のプロフィール
2024/11/21 (Thu)21:40
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2013/04/29 (Mon)00:00

 目をあけると、泣きそうな美花の顔が見えた。
「……かあさ」
「よかった、気がついたのね」
 美花は薫を抱きしめ、席を切ったように泣き出した。
「なんだか、夢を見てた気がする」
 よく覚えてないけどいい夢だった、とぼうっとしたままつぶやいた。
 薫は舞台の脇に寝かされていたようだった。周囲には大勢の人が心配そうに薫を見守っており、目が覚めて良かったと胸をなでおろしている。
「薫くんが目を覚ましたって!?」
 人ごみをかきわけて現れたのは村中だった。
「だいじょうぶかい?」
 目線を合わせ、薫の顔をのぞきこむ。
 呆けた目つきでうなずくと、村中は重々しく告げた。
「村永・月音さんがさらわれた」
「……え? 月姉が?」
 冷水を浴びせられたように、頭がさえた。
「ちょっとあなた!」
「村の男たちが追ってるけど、彼らじゃ助けられない」
 美花の抗議を無視して、村中はつづけた。
「しばらく雨がつづいたから、地面がぬかるんでる。足跡がくっきり残ってるから、見失うことはない」
「……ありがとうございます」
 礼を言って、薫は美花の腕から抜け出した。
「薫? どうするつもり?」
「助けに行くよ」
 驚いて止めようとする美花を押しとどめたのは、村中だった。
「お母さん、ここは薫くんに任せて」
「なに言ってるの!? 薫は小学生なのよ!?」
「母さん!」
 髪を振り乱して抗議する美花を、薫が一喝した。
「これはぼくにしかできないことだから、どうか行かせて。上手く説明できないけど、ぼくなら大丈夫。それに、一人じゃない」
 そう言って、かたわらを見る。
 オンッ
 そこには、勇ましく尾を振る狼の姿があった。
「え? 犬? いつの間に」
「犬じゃなくて、狼なんだけど」
 混乱する美花を見て、薫は苦笑する。
 この狼がいったい何者で、どうしてここにいるのか、薫にもわからない。ただ、知っている。狼はこれからずっと薫のそばにいる。よき友であり、最高の相棒でありつづけるということを。
「じゃあ、行ってきます」
 それだけ言い残して、薫は狼とともに地をけった。

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ーーーーーーーーー
あとがき、のようなもの

読んでいただきありがとうございました。
小説第六章になります。


さあ、物語もいよいよ大詰めです。
タイトルは、若干五章のほうにずれてる感もありますが、ご勘弁を。
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