今後の掲載予定
【小説】薫と紗織の出会い
【設定】薫の戦闘スタイルや人間関係など補足
【設定】紗織のプロフィール
2013/04/17 (Wed)13:43
2
薫が村中に挨拶していたころ、美花は洗濯物を干し終わり、ふとだれかがこちらにむかって歩いて来るのに気づいた。
「美花さーん! おひさしぶりです!」
「月音ちゃんじゃない。久しぶりね」
相手が知り合いの少女と気づき、美花は笑顔で迎えた。
彼女は村永・月音(むらなが・つきね)。ふわふわとしたぬいぐるみのような雰囲気のある美少女だ。年は十六。龍田家とは昔から家族ぐるみの付き合いで、中学生のころはよく神社の手伝いをしてくれていた。この春に東京の私立高校に進学したので、実に四か月ぶりだろうか。
「帰って来るなら連絡してくれたらよかったのに。上がってく?」
「はい。実は、菊おじいちゃんにお願いがあって」
月音はホッとしたように笑った。
「お義父さん? 今はお客さんが来てるから、ちょっと待ってもらわないといけないけど、どうしたの?」
「家に帰ったら玄関先にこれが落ちてたんです」
そう言って月音が見せたのは、一本の矢だった。
「ウチで売ってる破魔矢じゃないみたいだけど、これがどうしたの?」
「これって、『白羽の矢』だと思うんです」
確かに、月音の持つ矢の羽は白かった。
「帰る途中に、同じバスに乗り合わせたおばあさんから気味悪い噂を聞いたばかりだから、なんだか怖くて」
『白羽の矢がたった家は、娘を一人生贄にさしださなければならない』。その噂は美花も聞いたことがあった。
生贄を要求するのは猿の化け物で、要求を無視しても力ずくで娘をさらっていくのだそうだ。
どうやら、神のふりをした猿の化け物が「娘をさしださなければ、村を滅ぼす」と言って生贄を要求していたという昔話が元になっているらしい。
「何もないならいいんですけど、できたらお祓いとかしてほしいなって」
月音はこういうオカルトじみた話が苦手だったと美花は思い出した。霊感が強いのか、昔から不思議なものを視たり聴いたりする娘だった。それのため、美花も大げさだと笑い飛ばすようなことはしなかった。
「とにかく、相談してみなさい。そうそう、用事がすんでからでいいから、薫にも会ってあげて。喜ぶわ」
「はい。薫くんって、今夜の夏祭りで神楽を舞うんですよね。すごいなぁ」
などと話していると、玄関から村中が顔を出した。
「村中さん、お話は終わりました?」
「はい。いろいろ面白いお話を聞かせてもらえました」
笑顔で答える村中だったが、月音の方に視線を移すと、ハッと目を見開いた。
「……あ、あんたは」
「え?……と、村永・月音といいます。あ、あの、何か?」
「い、いや、なんでもない。気にしないでくれ」
思わず素が出たといったところか。村中はやや乱暴な口調で何かをごまかすように言うと、いそいそと参道の方に歩いて行った。
「……何なんですか? 今の人」
「さあ。東京から来た人らしいけど……」
眉をひそめて、二人は顔を見合わせ首をかしげた。
薫が村中に挨拶していたころ、美花は洗濯物を干し終わり、ふとだれかがこちらにむかって歩いて来るのに気づいた。
「美花さーん! おひさしぶりです!」
「月音ちゃんじゃない。久しぶりね」
相手が知り合いの少女と気づき、美花は笑顔で迎えた。
彼女は村永・月音(むらなが・つきね)。ふわふわとしたぬいぐるみのような雰囲気のある美少女だ。年は十六。龍田家とは昔から家族ぐるみの付き合いで、中学生のころはよく神社の手伝いをしてくれていた。この春に東京の私立高校に進学したので、実に四か月ぶりだろうか。
「帰って来るなら連絡してくれたらよかったのに。上がってく?」
「はい。実は、菊おじいちゃんにお願いがあって」
月音はホッとしたように笑った。
「お義父さん? 今はお客さんが来てるから、ちょっと待ってもらわないといけないけど、どうしたの?」
「家に帰ったら玄関先にこれが落ちてたんです」
そう言って月音が見せたのは、一本の矢だった。
「ウチで売ってる破魔矢じゃないみたいだけど、これがどうしたの?」
「これって、『白羽の矢』だと思うんです」
確かに、月音の持つ矢の羽は白かった。
「帰る途中に、同じバスに乗り合わせたおばあさんから気味悪い噂を聞いたばかりだから、なんだか怖くて」
『白羽の矢がたった家は、娘を一人生贄にさしださなければならない』。その噂は美花も聞いたことがあった。
生贄を要求するのは猿の化け物で、要求を無視しても力ずくで娘をさらっていくのだそうだ。
どうやら、神のふりをした猿の化け物が「娘をさしださなければ、村を滅ぼす」と言って生贄を要求していたという昔話が元になっているらしい。
「何もないならいいんですけど、できたらお祓いとかしてほしいなって」
月音はこういうオカルトじみた話が苦手だったと美花は思い出した。霊感が強いのか、昔から不思議なものを視たり聴いたりする娘だった。それのため、美花も大げさだと笑い飛ばすようなことはしなかった。
「とにかく、相談してみなさい。そうそう、用事がすんでからでいいから、薫にも会ってあげて。喜ぶわ」
「はい。薫くんって、今夜の夏祭りで神楽を舞うんですよね。すごいなぁ」
などと話していると、玄関から村中が顔を出した。
「村中さん、お話は終わりました?」
「はい。いろいろ面白いお話を聞かせてもらえました」
笑顔で答える村中だったが、月音の方に視線を移すと、ハッと目を見開いた。
「……あ、あんたは」
「え?……と、村永・月音といいます。あ、あの、何か?」
「い、いや、なんでもない。気にしないでくれ」
思わず素が出たといったところか。村中はやや乱暴な口調で何かをごまかすように言うと、いそいそと参道の方に歩いて行った。
「……何なんですか? 今の人」
「さあ。東京から来た人らしいけど……」
眉をひそめて、二人は顔を見合わせ首をかしげた。
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あとがき、のようなもの
読んでいただきありがとうございました。
小説本編の第二章になります。
さあ、役者は出そろいました。そろそろ事件に入っていきます。
あとがき、のようなもの
読んでいただきありがとうございました。
小説本編の第二章になります。
さあ、役者は出そろいました。そろそろ事件に入っていきます。
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