今後の掲載予定
【小説】薫と紗織の出会い
【設定】薫の戦闘スタイルや人間関係など補足
【設定】紗織のプロフィール
2014/03/24 (Mon)17:11
東京は千代田区にある田抜一刀流道場。
つい先ほどまでは威勢のいい掛け声や竹刀の打ち合う音が響いていたが、稽古の時間を過ぎた今は、二、三人が残っているだけなので静かだった。
「これまでにしましょう」
残り稽古に付き合っていた田抜紗織は、竹刀を降ろすと相手に声をかけた。
道場主の一人娘である紗織は、高校生ながらも剣の達者であった。父の様に指導することは出来ないにしても、居残って稽古している生徒に助言したり、練習相手をするくらいのことはできた。
礼をかわして面を外すと、相手の少年が駆け寄ってきた。
「師匠、ありがとうございました」
「……師匠って呼ぶなと言ってるでしょ」
手ぬぐいで汗をぬぐいながら、紗織は少年を半眼でにらむ。
少年の名は龍田薫。小学六年生で、女の子に見違えそうなかわいらしい顔立ちをしている。何が気に入ったのか紗織に心酔しており、師匠と呼んで慕ってきている。勝手に弟子面されて紗織は辟易しているのだが、何を言っても薫は引き下がろうとはしなかった。
「師事するんなら父さんがいるじゃない」
「やー、です」
剣術を習うのなら絶対に父の方が適任のはずだが、薫は聞く耳持たずそっぽを向く。
「……なんでそこまで、私にこだわるの?」
今まで何度も尋ねるのだが、薫は「んー」と小首を傾げ、ふわりと微笑むのだ。
「そりゃ、初めて会った日のアレですよ。アレを見て、あなたがそうだって思ったんです」
……運命の人だって。
まるで睦言の様にささやく薫に、紗織は思わずドキッと胸を高鳴らせた。
「だ・か・ら」
ところが、薫はすぐに年相応の無邪気な笑顔に戻った。
「運命だってのが理由じゃダメですか?」
「……わけわかんないからダメ」
ひとつ息を吐いて胸の鼓動を鎮めると、薫に背を向ける。
「今日はもう遅いから、稽古は終わり。君も帰って、宿題でもやりなさい」
「えー!」
不満そうな声を聞き流しながら、紗織は防具や竹刀を片付ける。
「……あの日のこと、か。そんな特別なことだったかしら」
つぶやいて、紗織の意識は薫と初めて出会った事件を思い返していた。
つい先ほどまでは威勢のいい掛け声や竹刀の打ち合う音が響いていたが、稽古の時間を過ぎた今は、二、三人が残っているだけなので静かだった。
「これまでにしましょう」
残り稽古に付き合っていた田抜紗織は、竹刀を降ろすと相手に声をかけた。
道場主の一人娘である紗織は、高校生ながらも剣の達者であった。父の様に指導することは出来ないにしても、居残って稽古している生徒に助言したり、練習相手をするくらいのことはできた。
礼をかわして面を外すと、相手の少年が駆け寄ってきた。
「師匠、ありがとうございました」
「……師匠って呼ぶなと言ってるでしょ」
手ぬぐいで汗をぬぐいながら、紗織は少年を半眼でにらむ。
少年の名は龍田薫。小学六年生で、女の子に見違えそうなかわいらしい顔立ちをしている。何が気に入ったのか紗織に心酔しており、師匠と呼んで慕ってきている。勝手に弟子面されて紗織は辟易しているのだが、何を言っても薫は引き下がろうとはしなかった。
「師事するんなら父さんがいるじゃない」
「やー、です」
剣術を習うのなら絶対に父の方が適任のはずだが、薫は聞く耳持たずそっぽを向く。
「……なんでそこまで、私にこだわるの?」
今まで何度も尋ねるのだが、薫は「んー」と小首を傾げ、ふわりと微笑むのだ。
「そりゃ、初めて会った日のアレですよ。アレを見て、あなたがそうだって思ったんです」
……運命の人だって。
まるで睦言の様にささやく薫に、紗織は思わずドキッと胸を高鳴らせた。
「だ・か・ら」
ところが、薫はすぐに年相応の無邪気な笑顔に戻った。
「運命だってのが理由じゃダメですか?」
「……わけわかんないからダメ」
ひとつ息を吐いて胸の鼓動を鎮めると、薫に背を向ける。
「今日はもう遅いから、稽古は終わり。君も帰って、宿題でもやりなさい」
「えー!」
不満そうな声を聞き流しながら、紗織は防具や竹刀を片付ける。
「……あの日のこと、か。そんな特別なことだったかしら」
つぶやいて、紗織の意識は薫と初めて出会った事件を思い返していた。
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