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今後の掲載予定 【小説】薫と紗織の出会い 【設定】薫の戦闘スタイルや人間関係など補足 【設定】紗織のプロフィール
2024/11/21 (Thu)18:56
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2013/05/19 (Sun)20:54
公式リプレイ(リンク:漆黒と血飛沫の舞う日)のネタバレを含むのでご注意ください。
大丈夫って方は、どうぞ下へお進みください。

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2013/02/04 (Mon)14:00
12月24日。
 町はクリスマス一色であろうが、田抜・紗織は大した興味があるわけでもなく、自宅でのんびりと過ごしていた。
 昼食を終えたばかりの昼下がり。もう少し居間のこたつでぬくぬくしてから、道場で一汗流すつもりである。
「‥‥ふう」
 小さくため息をついて、紗織は読み終えた少女漫画を閉じた。
 普段の紗織を知る者であれば、彼女が少女漫画なんてものを持っているのを見て目を剥くかもしれない。もちろん、紗織自身も柄ではないと思っている。友人から半ば強引に貸しつけられなければ、読むことなどなかっただろう。
 ところが、ちょっとした時間つぶしのつもりで読み始めると、意外に面白かった。みるみる物語に引き込まれ、気づいたらひと息に一冊読み切ってしまっていた。
 ‥‥今度本屋に寄ったら、続編買ってみようかな。
 余韻に浸りながらそんなことを考えていると、ふあぁと大きなあくびがこぼれた。
 ‥‥ちょっとくらい、転寝してもいいかな。
 横目で時計を確かめ、紗織はごろりと横になった。

  * * *

 紗織は一人、台所という名の戦場に立っていた。
 料理は苦手という意識があるわけではないが、クリスマスケーキを作るのは初めてだ。
「ええと、次は‥‥」
 クリームやら小麦粉やらで汚れながら悪戦苦闘していると、背後から龍田・薫が覗きこんできた。
「師匠、何してるんですか?」
 彼女を師と呼んで慕う少年は、紗織の手元を覗いて目を輝かせた。
「もしかして、クリスマスケーキ?」
「そうよ。邪魔だからあっち行ってなさい」
 邪険に扱われて薫はむくれるが、立ち去る様子は見えない。
「あの、味見‥‥」
「だめ」
 皆まで言わせず切り捨てると、薫はますます頬を膨らませる。
「えー、ちょっとだけ」
「ああもう、わかったわかった。そこの道具はもう洗うだけだから、付いてるクリームなめるくらいならいいわよ」
 面倒くさくなって、使い終わった泡だて器などを指差すと、薫は嬉しそうな笑みを浮かべる。
 何故か、その笑顔に不穏なものを感じ、紗織があとずさると、
「ぼくは、こっちのがいいな」
 薫はピョンと跳び上がり、紗織に抱きついた。
「ち、ちょっと!?」
 綿雪のような白髪に鼻先をくすぐられ、紗織の心臓が跳び上がった。
 そして‥‥。

 ――ペロッ

 ザラリと湿り気のある感触が、紗織の頬を撫でた。
「‥‥へ?」
 暴走しそうになっていた頭の中が急停止した。
 ポカンと間の抜けた表情の紗織の鼻先で、薫がにこにこと笑っている。
 頬についていたクリームをなめとったのだと理解して、紗織の頭が今度こそ爆発した。
「!!? ‥‥!!!!」
「ふふ、甘い」
 薫は、金魚のように口をぱくぱくさせる紗織の耳元に顔をよせてささやいた。その声は、クリームなど比べ物にならないほど甘く、紗織を芯から痺れさせる。
 薫はそっと顔を離すと、紗織の頬に残っていたクリームをやさしく拭った。
「甘いけど、少しもの足りないかな」
 幼さの残る声に大人顔負けの色香を滲ませながら、薫は指先についたクリームを紗織の唇に乗せる。
「ねえ、もう一口味見していい?」
 紗織の目を覗きこんで、藍の瞳が微笑んだ。
「いいでしょ? ‥‥紗織さん」

  * * *

「――いいわけあるかっ! って痛!?」
 飛び起きた紗織はこたつの中で足をぶつけて悶絶した。
「ぐ‥‥今のは、夢?」
 ゆっくりと身をおこすと、そこは紗織の自宅の居間だ。台所ではないし、クリスマスケーキを作っているなんてこともない。第一、薫がいるはずがない。
「なんだ、夢かぁ」
 未だにバクバクとやかましい胸を抑え、こたつにつっぷした。
「‥‥てか、なんなのよ、あれは」
 あんな夢を見たのが誰かに知れたら、その場で闇堕ちするかもしれない。否、淫魔に堕ちたらあれ以上のことを実行しそうだから闇堕ちもできない。となれば、切腹しか‥‥。
 火のように熱く火照った顔を手で仰ぎながら、紗織は傍らの少女漫画を憎らしげに見つめた。
 きっと、この漫画のせいに違いない。そうでなければ、あんな夢を見るはずがないのだ。
 ‥‥どうせなら、漫画のキャラが出てくればよかったのに。
 それならば、まだ笑い話ですむのだ。だのに、どうして現実の知り合いが、それもよりによって薫が出てくるというのか。
「何が『紗織さん』よ、こっ恥しい! だあっもう、相手は小6よ! 次からどんな顔して会えってのよ!!」
 行き場のない怒りをぶつける様に虚空にほえて、紗織はこたつの中に潜り込んでしまった。
[END]

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